モーツァルト 弦楽四重奏曲 第14番 ト長調 KV387「春」 楽曲構成 index(楽曲解説) 

*モーツァルト 弦楽四重奏曲 第14番 ト長調 KV387「春」 楽曲構成 index(楽曲解説) 



2023.1.30

久しく聴いていなかったモーツァルト。新鮮に心に響きます。

モーツァルト 弦楽四重奏曲 第14番  ト長調 KV387「春」

 ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが1782年に作曲した弦楽四重奏曲。フランツ・ヨーゼフ・ハイドンに捧げられた全6曲ある『ハイドン・セット』のうちの1曲目であり、『春』の愛称で知られる。

 第1楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェ・アッサイ ト長調、4分の4拍子、ソナタ形式。はつらつとした清新な息吹。生命感あふれる音楽。春の野を行くようなさわやかでうきうきしていて、第2主題など舞いながら歩み出すような。

 第一主題は、4つの楽器で示される。内声や低音の動きをみても、在来の作品のように、ただ第一ヴァイオリンの主旋律に和声を提供するだけでなく、クロマティックな動きをふくんだ対位法的な性格をもっでいる。やはりクロマティックな動機を中心にした経過部をはさんで、第二主題が型どよりのニ長調で示される。しかし、ここでも第一主題ととくに対比させるために、第一ヴァイオリンを休ませたり、第一主題ののびやかさに対して、気ぜわしさをもたせたり、和声づけもごく簡単にして、いかにも第二主題であることを、明確にしている。これは第一ヴァイオリンによって反復され、ダイナミックな効果に富んだ結尾部へうっり、かろやかな結尾主題で呈示部を終る。
 展開部は、第一主題と、新しく設けられた旋律が中心となり、結尾主題も効果的に用いらえれ、楽章のクライマックスを築きあげる。しかし、ここでもただ緊迫感のみをただよわせず、音楽に憧れを感じさせる。
 再現部は型どおりで、まず第一主題が前と同様に示され、つづいて原調にもどった第二主題が、これも呈示の際と同じ楽器、同一順序でふたたび示される。そして、ベつに終絡部を設けることなく、簡単に結ばれている。


 第2楽章 メヌエット:アレグロ - トリオ ト長調、4分の3拍子。3部形式。メヌエットは明るくさわやかですが、トリオでは戸惑いや躊躇するような思い。

 メヌエットとはいえ、すでに舞曲としてのメヌエットからはかなり遠ざかっており、緊張したれ気分をもっている。メヌエットの中心主題はpとfの急激な交替をふくむ、ここにも、クロッマティックな動きがみられる。
 ト短調で書かれたトリオは、モーツァルトにとっては宿命缶な調性ともいいうる「ト短調」特有の不気味な気分をもち、まったくメヌエットをはなれたものである。

 第3楽章 アンダンテ・カンタービレ ハ長調、4分の3拍子 展開部を欠くソナタ形式(または二部形式)。哀しくも美しい旋律を紡いでいきます。

 第一主題は、第ヴァイオリンとヴィオラによる切分音を件奏として、和第一ヴァイオリンソンが主奏する。「カンタービレ」とは指定されながら、切分音やチェロの重々しい動きによって、流暢な歌ではなく、三小節目以下の主誕律も、常ならば当然たのしくうたい流されるべき経過部も、うたうことが禁じられでもしたかのようである。しかも、第二主題にさきだって、ト短調の旋律がカノン風に示され、つづいてこれ和切分音に伴奏された第二主題がとだえがちに、休止をはさんで示される。
 続いて、展開部はなく、和第一主題が再現するが、通例ならべつに指定されなくてでも「うたう」モーツアァルトの緩徐楽章が、「カンタービレ」とことわられながら、逆にとだえがちである。
 再現部は、ベつに変哲なく、エピソード、第二主題ともに五度下の主調に移されて示され、静かに終る。


 第4楽章 モルト・アレグロ ト長調、4分の4拍子、ソナタ形式。「ジュピター」の第4楽章を彷彿とさせる音楽。スケール大きい。迫力ある音楽。主題が次々と展開していく推進力が魅力です。

 活発な終楽章で、第一主題がフラガート風に示される。第一ヴァイオリンが一息々々吹きこむように音をのばし、下声部がこまかく動く特徴ああるエピソードをはさんで示されるニ長調の第二主題も、やはりフガート風にチェロから高音楽器へとうけわたされ、つづいておなじくニ長調で、第一ヴァイオリンがほがらかにうたいだす。
 展開部は、まずクロマティックの音型を中心にした導入に始まり、第一主題の展開をおこなう。
 そして、再現部では、はじめに第一主題が示されず、特徴あるエピソードがハ長調でおなじようにかなでられたたのち(したがって、ここまでを展開部と考えるべきである)、第二主題がト長調で再現する。このときa「主題」とb「応答」とを入れ替えて、第二主題の対位として示される。すなわち、ここで第一主題と第二主題を、二重対位法によって、同時に再現させている。
 こうして、他に類をみない二主題の同時再現がおこなわれたのち、第二の第二主題が高らかにうたわれ、展開部の導入とおなじ材料による終結部にうつり、第一主題の三現を思わせるaの呈示と、トリルによって、曲を終わる。

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*下記のIndex time付の楽曲構成表は、私所有のCDスメタナ四重奏団「W.A.モーツァルト:ハイドン四重奏曲集」(1982年録音)の資料をもとにして、所有のCDプレーヤーで調べ記録したIndex timeを加えて、自身で時系列に縦に組み直して作成したものです。
 手作業でメモし整理したものですので、Index timeには多少誤差等があるかもしれません。
*CDスメタナ四重奏団「W.A.モーツァルト:ハイドン四重奏曲集」(1982年録音)を購入される方、又はお持ちの方は、このIndexによって、各楽章の構成を把握しながらお聴きになることができます。
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