オスカー・ピーターソン「 The Trio 」 鑑賞ノート -Oscar Peterson-「ザ・トリオ」

 *オスカー・ピーターソン・トリオ  Oscar Peterson「The Trio」「ザ・トリオ」

オスカー・ピーターソン・トリオといえば、「ザ・トリオ」(「The Trio」)でしょう。



数十年前に、ジャズ歴何十年という先輩に、ジャズのレコード・コレクションの中で「よく手に取って聴くのは何ですか」と、きいたことがありました。答えは「The Trio」。

わたしの場合も、ジャズを聴きたいなと思ったとき、まず手に取るのが、この「The Trio」そして、「Saxophone Colossus」(ソニー・ロリンズ)です。両者とも、乗りに乗っている演奏で十分にジャズを楽しめる、飽きが来ない演奏、くつろいでジャズを楽しめるなどのことが先ず頭に浮かびます。両方とも、聴いた後に、ジャズを聴いたなあという満足感、充実感が残るレコードです。

「Saxophone Colossus」が1956年、「The Trio」1960年頃。この頃のジャズは好みに合っています。モノラルからステレオにかけての時代です。


オスカー・ピーターソンのレコードやCDは、十数枚程所有していますが、この中で一番好きなのは、やはり「The Trio」ということになってしまいます。

この演奏はライヴです。1曲目からしてライヴの雰囲気満載です。ライヴというこの雰囲気が何ともいえません。それも、シカゴのジャズ・クラブ「ロンドン・ハウス」ですから、大きなコンサートホールではなく、アット・ホームのこぢんまりとした雰囲気がいいです。

ピアニストのオスカー・ピーターソン、ベースのレイ・ブラウン、ドラムスのエド・シグペンは、黄金の「ザ・トリオ」と呼ばれていました。このトリオによるシカゴ、ロンドン・ハウスでのライヴ盤は、4種類のレコードが出ています。これらのレコード(CD)は、「The Trio」に劣らず素晴らしいものばかりです。わたしの好みはたまたま「The Trio」だというだけで、どれを一番に推しても、わたしには納得できます。

「ロンドンハウスのオスカー・ピーターソン」(下写真1番目)
「ザ・トリオ」(下写真2番目)
「サムシング・ウォーム」(下写真3番目)
「プット・オン・ア・ハッピー・フェイス」(下写真4番目)



このシカゴの「ロンドン・ハウス」は、非常に音響効果も良く、ピーターソン自身大変気に入っていたようで、最高の演奏を残しています。アット・ホームな感じで、お客とのコミュニケーションも良好です。レコードでも、客席の雰囲気が十分に伝わってきます。これも楽しさの一因になっているかもしれません。この雰囲気を味わいながら、お酒でも飲みながら聴くオスカー・ピーターソン・トリオは最高に楽しいです。

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 The Trio   録音データ:
オスカー・ピーターソン(p)、レイ・ブラウン(b)、エド・シグペン(ds)
録音1960年~1961年 シカゴ、ロンドンハウスにて

SIDE1:
1.恋したことはない I've Never Been in Love Before
2.ウィー・スモール・アワーズ In the Wee Small Hours of the Morning
3.シカゴ・ザット・トッドリング・タウン Chicago,That Toddling Town

SIDE2:
4.夜に生きる The Night We Called It a Day
5.サムタイムズ・アイム・ハッピー  Sometimes I'm Happy
6.ウィスパー・ノット Whisper Not
7.ビリー・ボーイ Billy Boy

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〈いろはno思いこみ鑑賞ノート〉

SIDE1:
1.恋したことはない I've Never Been in Love Before

ライヴの演奏がいよいよ今から始まるという期待感。この雰囲気が何ともたまらないです。ミディアム・テンポで歯切れのよい演奏を繰り広げていき、小気味よいアドリブ。pにds、bが絡み合っての演奏が展開します。

2.ウィー・スモール・アワーズ In the Wee Small Hours of the Morning

前曲と雰囲気ががらっと変わります。つぶやきの如きピーターソンのpから始まり、美しい音の世界を繰り広げていきます。レイ・ブラウンのbが入ると、影のようにpに自然に寄り添います。pは小刻みな変化をつけて動き回り美しい世界を創っていきます。bのつぶやくような動きが効果的。pとbの一体感。ピーターソンのpの夢見ような美しい世界を描き出していきます。

3.シカゴ・ザット・トッドリング・タウン Chicago,That Toddling Town

また、前曲と雰囲気が変わります。この弾むような音、うきうきしてきます。このテンポで、pとdsとbとがいいコンビネーションで進みます。ハッピーなリズムに乗って、ライヴ演奏の楽しい雰囲気が満載です。楽しさが次第に膨らんでくる。乗ってくる。安定したしっかりとしたbの上にpが乗り、スリルのあるアドリブが展開。そして、三者一体となったこのトリオの独壇場。また、ピーターソンのピアノのアドリブのさえといったらないです。聴衆の身体がこのリズムに乗って動き出す雰囲気が伝わってきます。レイ・ブラウンのbのソロ、味があります。この後pが生き生きと動き出してすばらしい展開を行っていきます。

切りが無いのでこの辺でやめておきますが、このような感じで、大変楽しい演奏が繰り広げられていきます。(以上レコードのA面)

4曲目から最後の曲までも、どれも1~3曲目と同様大変素晴らしい演奏です。是非聴いてみてください。下にYouTubeのリンクを貼っておきますので。

リンク:「オスカー・ピーターソン I've Never Been in Love Before」

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ベーゼンドルファー

オスカー・ピーターソンは、この前のブログで紹介したベーゼンドルファー使いで有名です。彼は、自宅スタジオでベーゼンドルファーインペリアルを使って録音を行ったりしていたようです。ベーゼンドルファーだからこそ、ピーターソンの強靱な打鍵に絶え得るのでしょう。何しろピーターソンの演奏が乗ってくると勢いは止まりません。聞き手も一体となって舞い上がります。

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ジャズファンの中には、オスカー・ピーターソンというと、軽く見る人がいます。一部の評論家の評論を鵜呑みにするファンも多いのです。

評論家などあてにすると後悔しますよ。楽しむのは自分自身なのですから。評論家の評判などものともしないのが、ジャズ・ファンの本道です。

何十年もジャズを聴き続けてきた今は亡き、私の先輩もゴーイング・マイウェイで、評論家の言葉などものともせず、自分の耳と感性だけを頼りに、自分のジャズを聴き続けていました。乗りに乗っているピーターソンの演奏を愛好する、ゴーイング・マイウェイのジャズ・ファンはたくさんいます。そして、大いにオスカー・ピーターソン・トリオの演奏を楽しんでいます。

*一番下の右側のLPレコード「We Get Requests」は、友人から借りっぱなしのLPで40年以上経っていますが、もう時効でしょう。懐かしい思い出のレコードです。 

*ピーターソンとともに、ジュニア・マンスも時には聴きます(下右端のCD)。
 このレコード1959年の録音もよく、くつろいでジャズを楽しめます。CDでもよく響いてきます。アナログの録音の良さを味わえます。たまにだけ、気楽に聴くにはいいです。