歌曲集「詩人の恋」 鑑賞ノート -シューマン作曲・ハイネ詩-

*歌曲集「詩人の恋」OP.48 「いと美しき五月に」-シューマン作曲-

 春になると、なぜかこの曲を聴きたくなります。

  いと美しき五月に」  (シューマン作曲・ハイネ詩)

 この曲の一番のお気に入りは、ペーター・シュライアーのレコードです。下の動画をクリックして、是非聴いてみてください。五月そのもののように、春の喜びが溢れ出し、ゆったりと流れ出る美しい曲です。



Im wunderschönen Monat Mai,
Als alle Knospen sprangen,
Da ist in meinem Herzen
Die Liebe aufgegangen.

Im wunderschönen Monat Mai,
Als alle Vögel sangen,
Da hab ich ihr gestanden
Mein Sehnen und Verlangen.

いと美しき五月には
莟(つぼみ)、すべてほころびぬ。
わが心の内にも
愛は花開きぬ。

いと美しき五月には
鳥、すべて歌いぬ。
我が思慕と渇望を
我、かの人に打ち明けぬ。

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 この曲を初めて聴いたのは若き日のこと。すでに何十年も歳月は過ぎました。その時は、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ & イェルク・デームス(P)のLP盤で聴きました。下の写真の廉価盤でした。(歌曲集「詩人の恋」OP.48 シューマン作曲)



 ハイネ「歌の本」の中の16篇の詩に曲がつけられています。このハイネの詩と対訳を見ながら、繰り返し聴いていました。

 五月となった今また聴きたくなり、最初にLP盤を聴きました。懐かしいタイトル写真のジャケットからLP盤を取り出し、針を落とします。泉の底より湧き出づる清水の如くピアノが静かにはじまります。

   イェルク・デームスの懐かしいピアノの音。このLP盤との最初の出合いが新鮮に蘇ってきます。

 フィシャー・ディースカウの「いと美しき五月に」について下記のリンク


 その後、いくつかのCDを入手して併せて聴いてみました。

 ・ペーター・シュライアー&ノーマン・シェトラー(P)
 ・フィッシャー=ディースカウ & エッシェンバッハ(P) 
 ・フィッシャー=ディースカウ & イェルク・デームス(P)(LP盤と同じ録音)
 ・フリッツ・ヴンダーリッヒ&フーベルト・ギーゼン(P)
 ・フリッツ・ヴンダーリッヒ&フーベルト・ギーゼン(P)(ライヴ1965)

*ペーター・シュライアーのCD


*ディースカウ、ヴンダーリッヒのCD



 「いと美しき五月に」は、ペーター・シュライアーが好きですが、全曲聴きとおすとなると、フィッシャー=ディースカウ & エッシェンバッハが、いいのでしょうか。エッシェンバッハのピアノがとても美しく感じます。フィッシャー=ディースカウの、フレーズごとの微妙なニュアンスの変化が素晴らしいと思いました。

 ヴンダーリッヒの「詩人の恋」のライヴ盤はモノラル録音ですが、ヴンダーリッヒの歌の世界に引き込まれます。ヴンダーリッヒといえば、ベーム指揮の「魔笛」タミーノの歌も好きでした。

 この「詩人の恋」という歌曲集は、曲がとぎれなく次から次へと変幻自在に流れ来ては去って行くという感じです。この流れに身をまかせて聴いていきます。

 歌曲って何度も聞いていると飽きてしまうこともあるのですが、この歌曲集は未だに飽きが来ません。途中特にお気に入りの歌もふっと現れてきます。現れてはいつの間にか姿を消してしまいます。1・2・5・8・10・12そして、最後の14の曲などが好きな曲です。

 最後の14番の曲で、第12曲の「星輝く夏の朝」の一部が再現する最後の部分があります。BSの放送で、イアン・ボストリッジ&内田光子(P)の「詩人の恋」を以前聴きました。その時の内田のピアノが印象的でした。終曲の最後の部分のピアノの余韻が心にしみ通ってきます。

 Im wunderschönen Monat Mai… 今年の春も、この歌曲集を聴けることに感謝します。この曲とともに、あと何回春を迎えることができるでしょうか。

*歌曲集「詩人の恋」OP.48 「いと美しき五月に」-シューマン作曲-