ソニー・ロリンズ / サキソフォン・コロッサス 鑑賞ノート Saxophone Colossus / Sonny Rollins

*サキソフォン・コロッサス / ソニー・ロリンズ   Saxophone Colossus



クラシック音楽を主にして聴いているので、ジャズはたまにしか聴く機会はありません。しかし、いつしか無性にジャズの中に、この身体を浸したくなる時があります。

そんな時、取り出して聴くアルバムがこれです。ソニー・ロリンズの「サキソフォン・コロッサス」。たまに聴くジャズですから、不当たりはごめんです。ですから、自分の一番好きなアルバムを聴くということになります。その一枚。

ソニー・ロリンズのアルバムは、LP時代から収集してきたので、CDを含めると、ほぼ全て揃っています。その中でもこれ、これで満足! もう何度聴いたことでしょうか。何度聴いても飽きの来ないのがこのアルバムです。50年間、たまに、取り出しては聴き、取り出しては聴きし続けている数少ないアルバムです。ジャズの代名詞のようなアルバムです。そんなことは、ジャズファンなら誰でも知っていること。だれでも経験していることです。今更何をということでしょう。ジャズの名盤中の名盤ですから。

Sonny Rollins(ts),Tommy Flanagan(p),Dug Watkins(b),Max Roach(ds)

1.St. Thomas
2.You Don't Know What Love Is
3.Strode Rode
4.Moritat
5.Blue Seven

Prestige 1956年6月22日


〈いろはno思いこみJazz鑑賞ノート〉

モダンジャズの名盤中の名盤。ロリンズの豊かな淀みなく、尽きることないフレージング。次から次へのアイディアが泉に湧きいづる如く。アドリブの応酬です。躊躇するところなどどこにもなく、ふっ切れた演奏。


1.St. Thomas

 ドラムスの刻むリズムに、ロリンズのテナーが入ってきてテーマを奏す。この入りがいい。いよいよという予感。途中、ローチの長いソロが入り、聴き応えがある。それが終わると、再び、堰を切ったようにロリンズのテナーが入ってきて、フレーズが展開してゆく。波打つような長い音も。アドリブの応酬。pのソロ、tsテーマへ。

2.You Don't Know What Love Is

 前曲とがらっと雰囲気が変わり、ロリンズのtsがゆったりと入ってくる。それをバックのbとdsが響き合って支える。tsのじっくりとしたフレージング。郷愁を感ずるような演奏。息の長いフレーズの素晴らしいアドリブ。実に、濃厚この上ないジャズを聴いている満足感。充足感。ロリンズへの感謝というか敬意というか。このアドリブが何ともいいんだなあ、もう何回聴いたことか。決して飽きが来ない。pの美しい響きのフレーズも楽しめる。

3.Strode Rode

 また曲想が変わり、アップテンポ。tsーーーー。バックのdsの緊張感。tsのドライブ感が何ともいえない。bが支えつつ。アドリブの応酬。pがいい、ロリンズにこんなプレイをされると、pも乗ってくる。tsが入ってくる。dsも合体。独創的な何とよく歌うテナーなのだろう。自由自在の境地。融通無碍。dsがtsに実によくマッチしている。

4.Moritat

 今度は、ほっとくつろげる感じてtsが入ってくる。リズムは小気味よく刻み、気持ちよく吹いている感じ。これって有名な「モリタート」? 実に調子の良い演奏である。自由自在、この伸びやかさの何たること。pのソロ、太く力強い。ローチの例の機関銃の如きds。tsのロリンズが力強く、荒々しく舞い上がる。

 切りが無いのでこのへんでやめますが、こんな感じのアルバムです。ぜひ、興味のある方は聴いてみてください。はじめて聴く方は、何度も何度も聴いてください。1回聴いただけでは良さは味わえないでしょう。「天衣無縫」とは、この演奏のための言葉かと。

サキソフォン・コロッサス ソニー・ロリンズ 動画リンク

 

 味わいは噛めばかむほど出てきます。人生の味わいも同じかもしれません。じっくり噛みしめ味わうと、味が出てきます。経験的にそう思います。しみじみと、じっくり味わいます。

 俳句を詠んでいても、そう思います。「なんだこれ、つまらない句だな」と最初思っていた句が、何回も何回も詠んでいると、いつの間にか、実に味わいのある句に感じられてしまうという経験をします。

 ロリンズのこの時期の録音をもう一枚。これも素晴らしいアルバムで、手に取ると聴きたくなります。下の写真のアルバム。WAY OUT WEST。