アルバート・アイラー ラスト・レコーディング Vol.2 鑑賞ノート

*アルバート・アイラー  ラスト・レコーディング   (ニュー・ジャズ)("Nuits De La Fondation Maeght 1970" Vol.2)

 ジャズは、比較的古いものしか聴かない。初期のジャズからハードバップ辺りまでである。聴くときは、ゆったりとくつろいで聴くことが好きである。ジャズに求めるものは「くつろぎ」。
 でも、たまにスピリチュアルなものが無性に聴きたくなることがある。そういう時に、取り出して聴くのが、このレコード。「アルバート・アイラー ラスト・レコーディング Vol.2」である。この時は、耳をよーく澄ましてじっくりと聴く。
 このレコードは、「シャンダール・ニュー・ジャズ・シリーズ」とある中の1枚だが、古いジャズしか聴かないわたしには、「ニュー・ジャズ」については知識はない。縁の薄い「ニュー・ジャズ」かもしれないが、わたしの古い耳にもこれは聴きごたえがある。

前衛音楽祭 ライヴ(南フランス マグー近代美術館)

1970年7月27日 

Albert Ayler (ts,ss) Call Cobbs (p) Steve Tintweiss (b) Allen Blairman (ds)  Mary Maria (vo,ss) 

1.Truth is Marching in  2.Universal Message 3.Spiritual Reunion 4.Music is the Healing Force of the Universe

 実はこのレコード、高校か大学の頃にジャズなんてあまり知らないときに、FM放送で聴いて気に入ってしまい、衝動的に買ってしまったものである。

 ところで、1925年~1930年頃の初期のルイ・アームストロングの演奏は、素晴らしい、すごい演奏である。数分の録音時間の中に、気迫のこもった圧倒的なプレイを聴くことができる。本当に魂の喜びを感ずることのできる演奏だ。シンプルで且つスピリチュアル-これは、このレコードにも当時のルイの演奏にも、共通するものだとわたしは思う。


 わたしのこのアイラーのレコードとの出合いの内容は、このLPのライナーノートの記事とかなり重なるところがある。で、以下ライナーノートにより紹介する。

〈 ライナーノート(岩浪洋三)より〉
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アイラーはかつてこう語ったことがある。

「自分たちはルイ・アームストロングが初期においてみせたような演奏を現代においても行ないたいのです。

 彼らの演奏はよろこびにあふれていましたし、とても美しいひびきをもっていました。魂のよころこびではじまったジャズは魂のよろこびで終るペきだと思います

 アイラーは、ニューオリンズ時代のジャズをある意味で理想的なものだと考えていたので、その精神を現代によみ返らせようとした面があり、彼が作曲した曲はどれもシンブルで、誰でもか口ずさめるような素朴なメロディーをもっている。それはフォーク・メロディだったり、民謡だったり、黒人霊歌、マーチだったりする場合が多い。彼には音楽は人間の共通財産だという考えがあり、演奏者も皆んなが共通した精神をもって演奏するには憶えやすいシンブルなメロディーの方がいゝと判断したからである。このフランスのコンサートにおける演奏でも、素材はすべてシンブル・メロディーであり、演奏者全員の心がひとつに合わさっている点かききものになっている。

 数多いアイラーのレコードの中でも、アイラーの意図するものが完全に表現されているという点で随一のものであろう。先日ある雑誌からモダン・ジャズの全LPからベスト・テンを選んで欲しいと依頼きれたとき、ぽくはちゅうちょすることなく、この「VOL.2」をその中に入れた。ここでのアイラーたちの演奏は、なにか広大な宇宙全体に浸透していくような広がりと解放感をもっており、その精神性豊かなプレイは聞き手の心を浄化する作用さえ持っているように思う。このような精神的触れ合いを意図とした音楽こそ現代人にもっとも必要なものと云えるであろう。
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*アルバート・アイラー  ラスト・レコーディング    (ニュー・ジャズ)("Nuits De La Fondation Maeght 1970" Vol.2)