ルイ・アームストロング「Louis Armstrong The Hotfives & Hotsevens」 鑑賞ノート

*ルイ・アームストロング(サッチモ)鑑賞ノート「Louis Armstrong The Hotfives & Hotsevens」 1925~1930 

「やれやれ、暑くなりました。ジャズでも聴きませんか?」(5)

「やれやれ、暑くなりました。ジャズでも聴きませんか?」も5回目となりました。懐かしのルイ・アームストロング(サッチモ)を聴いて、その若々しいパワー全開の演奏から元気をいただきました。

万緑の夜や無垢なるジャズ熱し   いろは

 100年も前の古い録音ですが、サッチモの歴史的名盤です。若き日のサッチモのはち切れんばかりの演奏に圧倒されます。


*ルイ・アームストロング(サッチモ)鑑賞ノート「Louis Armstrong The Hotfives & Hotsevens」

 30年ほど前になりますか。ルイ・アームストロングの「Louis Armstrong The Hotfives & Hotsevens」という録音を集中して聴いていました。(写真はそのうちの1枚)これは、今から1世紀前の1920年代の録音です。

  アルバート・アイラーの記事にも書きましたが、1925~1928年のこの録音には、数分の録音時間の中に、ルイの気迫のこもった圧倒的なプレイを聴くことができます。真に魂の喜びを感ずることのできる演奏です。

 (「アルバート・アイラー ラスト・レコーディング Vol.2 鑑賞ノート」リンク)

 久しぶりにルイのこれらの録音を聴いてみました。新しいリマスター盤CDが出ています(下の写真)が、それには1925年からさらに1930年までの録音が収録されています。

 *写真は新しい方のリマスター盤4枚組

*ルイ・アームストロング(サッチモ)鑑賞ノート「Louis Armstrong The Hotfives & Hotsevens」

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当時のルイ・アームストロングその後の彼の影響
 ( CDの油井氏のライナーノートなどより引用)

 ニューヨークのヘンダーソン・バンドを訪ねてきたサッチモは、ダサイ服装と譜面も読めない才能を見破られ、洗練されたバンド・メンバーの嘲笑を浴びました。しかし、いったんコルネットを吹き出した時、全員の顔はこわばりました。

 今まで誰もが試みなかった高音を自在に吹くばかりか、聴きおぼえたテーマを自由にくずし、おどろくべきスイング感で吹きあげたのです。

「ジャズとはこういうふうにやるものなのか」と悟ったのは、フレッチャー・ヘンダーソン楽団の鍵々たるメンバーばかりではありません。ニューヨーク中の有名ミュージシャンが噂をきいて聴きに集まり、「なるほど、楽器がうまく吹けるだけでは駄目なのだ。スイング・フィーリングが必要なのだ」と納得しました。

 ルイ・アームストロングはジャズ史上に最初に現れた天才であり、ジャズ界全体に計り知れぬ影響を与えたのでした。トランペット奏者としては、すべてのトランペット奏者に影響を及ぼしました。特に重要なのは、ルイ・アームストロング - ロイ・エルドリッチ - ディジー・ガレスピー - ファッツ・ナヴァロ - クリフォード・ブラウンという系譜によってモダン・ジャズにつながっている点です。

 コルネット(トランペット)奏者はむろんのこと、楽器奏者ばかりでなく、アレンジャーも、歌手も、アームストロングのスタイルを、それぞれの楽器にとりいれたのです。

 コールマン・ホーキンス(テナー)、ジミー・ハリソン(トロンボーン)、アール・ハインズ(ピアノ)、ドン・レッドマン(アレンジャー兼アルト)、ライオネル・ハンプトン(ドラムとヴァイブ)・・・・・とあげてゆくと、この人たちが揃って、それぞれの分野で「ジャズ史上のパイオニア」として知られる巨人であることがわかります。

 即ちルイ・アームストロングは、たった一人で、今日ジャズとして知られる音楽の基礎を、すべての楽器分野に示したのでした。

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内容紹介
〈いろはno思いこみ鑑賞ノート〉

 ルイ・アームストロングの「Louis Armstrong The Hotfives & Hotsevens」というCDには、ルイがジャズ界のワン・アンド・オンリーとして君臨した1920年代後半のリーダー作が収められています。

 では、新しいリマスター盤4枚組CDセット〈4CD SET〉に即して内容を紹介します。

〈CD1・CD2〉(A・B)

 前半のCD2枚では、ルイが華麗で圧倒的な自身のスタイルを築き上げていった時期のプレイを聴くことができます。ジョニー・ドッズ(cl)、 キッド・ オリー(tb)との3管編成で、当時としては大胆なまでのソロ・アドリブの強調を打ち出しています。ルイのこれらの演奏に導かれて、ジャズが新しい次元に入っていくことになります。

 例えば、〈4CD SET〉の「CD2」を聴き始めると、最初の「Willie the Weeper」から、明るく活気に満ちたルイのcorが聴かれます。(当時、ルイはトランペットではなく、コルネットを吹いていました。)実に気持ちよく吹きまくっています。楽しくなります。
 「Wild Man Blues」は、途切れるような口ごもるようなアドリブ、葬送行進のような悲壮な、ジョニー・ドッズのclの悲しみの嘆きの如きアドリブも。

 「Alligator Crawl」ルイのcorの歯切れ良い展開。

 「Potato Head Blues」ルイのcorが調子よく進行展開。こんな感じで、収録された演奏のすべてにルイの激しい気迫と華麗で力強いプレーが聴かれます。クラリネットのJ・ドッズも絶頂を極めていて、そのclは聴きものです。

 このようにCD1・CD2の演奏も、つぎのCD3と同様すばらし演奏のオンパレードです。

〈CD3〉(C)

 トランペットを吹いている1928年のCDは、ジャズ史に輝く名盤です。しかもルイとアール・ハインズ(p)のコンビも史上最高のコラボレーションの一つ。これらは、どの演奏をとっても見事としか言いようがないです。

 特に「West End Blues」や「Tight Like This」は傑作と言われています。わたし的には、13の「Basin Street Blues」や14の「No One Else But You」なども好きです。

 「Tight Like This」のルイの華麗で力強いトランペット。クライマックスに持っていく構成の見事さ。

 アール・ハインズのセンスいいピアノ。その後おもむろにルイのtp。次第に盛り上がっていく。力強いtpのアドリブ。なんたる力動感。この高揚感。録音時間の制限があるのが、惜しい。もっと演奏をたっぷりと聴きたい! だが、これぞスピリチュアル。自分の制限ある出番の時間内に、ひたすら鳴き続けるセミのようだ。後先のことは眼中にない。まさに、三昧無碍の境地。

〈CD4〉(D)

 1929~1930年の録音。こちらも聞き応えのある演奏がぎっしり詰まっていて、十分に楽しむことができます。
 
 このように、貴重な素晴らしい演奏のオンパレードとなっているアルバムです。

 演奏時間も短いので、少しずつ分けて聴くことができます。是非聴いてみてください。わたしも思い出したように期間をおいて時々、取り出しては聴いて来ました。


*写真の左側が30年程前に購入したCDバラ売り。
 右側がリマスター盤の〈4CD SET〉で、A・B・C・Dの4枚のCD構成。
 左下の黒いCDは、日本版のCBS SONYのCD(1928年録音のものが集まっている。)

*ルイ・アームストロング(サッチモ)鑑賞ノート「Louis Armstrong The Hotfives & Hotsevens」

曲名紹介(資料)

*写真の黄色の箱のセット〈4CD SET〉のディスク毎の曲名です。全89曲。

ディスク: 1(A)1926-1927 
1    My Heart 2    Yes! I'm in the Barrel 3    Gut Bucket Blues 4    Come Back Sweet Papa 5    Georgia Grind 6    Heebie Jeebies 7    Cornet Chop Suey 8    Oriental Strut
9    You're Next 10    Muskrat Ramble 11    Don't Forget to Mess Around 12    I'm Gonna Gitcha 13    Droppin' Shucks 14    Who' Sit 15    He Likes It Slow 16    King of the Zulus 17    Big Fat Ma and Skinny Pa 18    Lonesome Blues 19    Sweet Little Papa 20    Jazz Lips 21    Skid-Dat-De-Dat 22    Big Butter and Egg Man 23    Sunset Cafe Stomp 24    You Made Me Love You 25    Irish Black Bottom

ディスク: 2(B)1927
1    Willie the Weeper 2    Wild Man Blues 3    Chicago Breakdown 4    Alligator Crawl 5    Potato Head Blues 6    Melancholy Blues 7    Weary Blues 8    Twelfth Street Rag 9    Keyhole Blues 10    S.O.L. Blues 11    Gully Low Blues 12    That's When I'll Come Back to You 13    Put 'Em Down Blues 14    Ory's Creole Trombone 15    Last Time 16    Struttin' With Some Barbecue 17    Got No Blues 18    Once in a While 19    I'm Not Rough 20    Hotter Than That 21    Savoy Blues 

ディスク: 3(C)1928-1929
1    Fireworks 2    Skip the Gutter 3    Monday Date 4    Don't Jive Me 5    West End Blues 6    Sugar Foot Strut 7    Two Deuces 8    Squeeze Me 9    Knee Drops 10    Symphonic Raps 11    Savoyagers' Stomp 12    No, Papa, No 13    Basin Street Blues 
14    No One Else But You 15    Beau Koo Jack 16    Save It, Pretty Mama 17   Weather Bird 18    Muggles 19    Hear Me Talkin' to Ya? 20    St. James Infirmary 21    Tight Like This 22    Knockin' a Jug

ディスク: 4(D)1929-1930
1    I Can't Give You Anything But Love 2    Mahogany Hall Stomp 3    Ain't Misbehavin' 4    Black and Blue 5    That Rhythm Man 6    Sweet Savannah Sue
7    Some of These Days 8    Some of These Days 9    When You're Smiling (The Whole World Smiles With You) 10    When You're Smiling (The Whole World Smiles With You) 
11    After You've Gone 12    Ain't Got Nobody 13    Dallas Blues 14    St. Louis Blues 
15    Rockin' Chair 16    Song of the Islands 17    Bessie Couldn't Help It 18    Blue Turning Grey over You 19    Dear Old Southland 20    Rockin' Chair 21    I Can't Give You Anything But Love
*ルイ・アームストロング(サッチモ)鑑賞ノート「Louis Armstrong The Hotfives & Hotsevens」